がちゃん……
玄関の扉の開く音。
その音と共に、風姫は見ていた本を栞も挟まずに閉じて玄関へぱたぱたと駆けていった。
「おかえり、朱鷺っ」
廊下へと上がる朱鷺の腕にぎぅっと抱きつき、顔を見上げた。
「ただいま、今日も元気だな……」
くしゃっと。風姫の頭から耳にかけて一撫でし、朱鷺はそのままリビングへと向かう。
くっついたまま、風姫もリビングへと戻ってきた。
くっつくこと十数分。
「なぁ……」
ふいに朱鷺が口を開く。
「うん?」
「……ずっとくっついておく気か?」
少し呆れの混じった口調だった。
「うん。だって、いつも傍に居たいんだもん」
そんな呆れた声を無視するかのように、風姫は満面の笑みで答えた。尻尾もはたはたと揺れている。
「そか……まぁ、いっか」
呆れたまま納得すると、朱鷺はふいに風姫の頬へと手を伸ばした。そっと触れて、自分の方を向かせる。
笑顔のままの風姫は、朱鷺のその行動に瞳を伏せた。
「……ま、好きなだけ傍にいろ」
「うん♪」
了。