Planet of Dark〜天空の惑星〜

■第2話 正義のヒロイン、初めての戦い

「ってぇ、何これーっ!?」
 赤いプロテクトスーツを纏った伽耶は自身の姿に驚き、声を上げた。
「驚いている場合じゃない。来るぞ!」
 青いスーツの男が伽耶の注意を前方へ向けさせる。
 銀髪の男は、手下であろう小さな蝙蝠をたくさん作り出していた。その者たちを二人に差し向けてくると同時に、長剣を構えて襲い掛かってきた。
 ガキンッと金属の重なり合う音と共に、青いスーツの男が銀髪の男の相手をする。
「……ってことは、私はこっちを相手にすればいいのね」
 襲ってくる小さな蝙蝠を伽耶は手で払おうとする。けれど、それだけでは蝙蝠が退いてくれるはずもなく。
「どうしろっていうのよっ!」
 伽耶の叫びに、プロテクトスーツを身に付けてもなお、腕に装着されたままのベルトについた小さな機械が光る。
「ここを押せばいいの……?」
 淡く光るボタンらしきものに触れる伽耶。押されたボタンは輝きを増し、光が伽耶の手を包み込んだかと思うと、何か長いものへと光は形状を変えていく。
「扇……?」
 光が消えるとともに伽耶の手に握られていたのは、かなりの長さの鉄扇だった。
 どう使ったものか分からないというのに、伽耶の周りには蝙蝠たちが群がってくる。
「えぇいっ!」
 半ばやけになって、その鉄扇を開いたままの状態で伽耶は振り回した。
 振り回された鉄扇から風が巻き起こり、群がってくる蝙蝠たちを吹き飛ばす。
 見た目の割りにその鉄扇は軽く、あまり力に自信はない方である伽耶でも振り回せるようだ。
「畳めば……っ!」
 開いた状態から、閉じた状態にして、再度伽耶はその鉄扇を振り回す。鉄扇に打たれた蝙蝠たちは地上に落ちると、消えた。
 風を起こしておいて群がる蝙蝠たちを退かしながら、少なくなったところで閉じた鉄扇で攻撃する。それの繰り返しで、気づけば蝙蝠たちは姿を消していた。
「ちぃっ!」
 ガキンッと金属音が響き、銀髪の男と青いスーツの男の剣が勢い良くぶつかる。そして、その勢いで銀髪の男は数歩下がった。
「このままだと分が悪い。退散させてもらうよ」
 そういうと銀髪の男は、マントを翻した。そして、マントごと、その男はそこに存在しなかったかのように、消える。
「終わった、の……?」
 伽耶がホッと安心したのも束の間。
 遠くからパトカーと救急車のサイレンの音が聞こえてきた。この学校へと近づいてきているのが分かる。
「まずいな」
 青いスーツの男はそう呟くと、伽耶の手を引いた。
「こっちに来て」
「え!?」
 伽耶は男に手を引かれたまま、階段を上っていくのだった。


続く。