深夜の都内某所。
生放送のラジオ番組が今、正に放送されていた。
「次のお手紙は都内にお住まいのペンネームKAYAちゃん。綺麗な響きの名前だね。えぇっと何々……」
テーブルに積み上げられた葉書や封書の中から1枚の葉書を取り出して、表書きを読み上げる青年。
「『おかしな話だって、笑ってくれていいです。でも、聞いてください』だって。うん、相談コーナーなんだから、何でも聞くよ。『先日、一羽の真っ赤な鳥が部屋に舞い込んで来たんです。逃げようとしないから、今も部屋に居たりするのですが……時折、その鳥の見上げてくる瞳に吸い込まれそうな感じがして。それに、何だか、呼びかけられているような気がするんです。……なぁんて、やっぱりこんな話してもどうにも取り合ってもらえませんよね。だから、1曲、Setsuの新曲を流してください』……そういうわけで、KAYAちゃんからのリクエスト。Setsuの新曲を聴いてください」
青年がそこまで言うと、スタジオの外のスタッフが操作し、曲が流れ始める。
ほぅっと、青年はひと息つくと、先ほどの葉書を眺めた。そして呟く。
「……見つけた」
「きゃぁっ! ゆっきーに葉書読んでもらえたよぉっ!」
場所は変わって、郊外のある家。
少女はラジオから流れる曲を聞きながら、机の傍の鳥篭の中に話しかけた。
鳥篭の中には一羽の赤い鳥。
「……でも、やっぱ話は信じてもらえない、よね」
鳥篭の入り口を開け、指を添えると、その赤い鳥は指に止まってくる。
チチチ……と小さく鳴きながら、肩へ、頭上へ、腕へと鳥は元気に飛び回る。
「それでもいいの。誰かに話を聞いてもらえただけでも……」
呟いて、少女はまた鳥篭にその鳥を戻した。
――……気付いて。
赤い鳥がやって来てからというものの、度々少女の中に響く言葉。
見回しても居るのは鳥くらいで、どう対処していいものか分からない。
だから、誰かに話してみようと、ラジオに投稿してみた。
そしてそれが読まれることで、何だか少女は安心したのだった。
今宵も夜が更ける。
二人が出会う日は、刻一刻と近づいていた。